キオク

プロローグ



 不意に僕の耳に泣き声が響いた。

 周りを見渡してみると、公園の一角で少女がしゃがみこみ泣いている。

 姿恰好を見る限り、僕と同い年くらいだろう。

 困っている様子に見えたため、僕は声をかけてみることにした。

「どうしたの?」

「え〜ん、え〜ん!」

 案の定、一向に少女は泣きやむ気配を見せない。

 どうすればいいものか困ってしまう。

 考えに考えた挙句、僕が出した結論は──

「こ、これあげるよ」

 僕はズボンのポケットに手を突っ込み、ある物を取り出した。

「ぐずん……なにこれ?」

 掌に鎮座した物体に興味を示したのか、少女は泣き止んで僕の顔を見上げる。

「お守り! 君にあげるよ!」

 掌には縦長の形状をした、どこにでもありそうな一つのお守り。そのお守りは僕らを魅了させるように、

燦然と輝いていた。

「ほんと? なんだか綺麗だね!」

 ぱっと少女の顔が、無邪気な笑顔で溢れる。

 様子を見る限り、大分機嫌は良くなったようだ。

 少女は僕の掌からお守りを受け取ると、紐を摘み空へと掲げた。太陽の光に乱反射したお守りは更に

輝きを増す。

「あれ? 何か入っているよ?」

 少女はお守りが大きく膨らんでいることに気付き、興味心身の眼差しで袋を開いた。

 袋から転がり出てきたのは、宝石に似せた二つの石の玩具。

 それは宝石に負けず劣らず、海を彷彿させるような瑠璃色で煌めいている。

「綺麗でしょ? 僕の宝物なんだ」

「へぇ〜。こっちも綺麗だね」

 二人は終始、煌々と輝く石の玩具に見惚れていた。



 僕らが交わした約束の始まりはここから──



2007年6月17日 公開




     

inserted by FC2 system